our vision

およそ130年前、劇作家アントン・パブロヴィチ・チェーホフは医師としてコレラ防疫に奔走しました。それはチャイコフスキーはじめ20万以上のロシア人の命を奪ったパンデミックでした。チェーホフ四大戯曲の一作目『かもめ』はそのすぐ後に書かれています。第一幕には、生物が死に絶えた虚無の世界で一つの魂が語り出す劇中劇があります。トレープレフが書き、ニーナが演じ、客席のアルカージナが不機嫌になり、ドールンが危ぶみ、トリゴーリンがちょっと気にした不思議な一人芝居。それはもしかすると、疫病を知り尽くした生活を経た劇作家が、見通した世界の果てかもしれません。

かつて戯曲翻訳者の仕事は、デスクに向かって書かれた文字と睨み合い、外国人作者と日本語の読者に貢献することでした。もう少し言えば、一つの言語で書かれた戯曲が他言語で再定義されることへの尽力でした。ですが、世界の演劇人と作品づくりをする現代では、役割はもっともっと広がっています。演劇の作り手として主体的な表現者であることが求められていると感じています。海外作家と協働できる日本語の表現者であること。稽古場で俳優たちとコラボレートできる翻訳者であること。自動翻訳機やAIには代替されない劇的な表現者であること。そんな戯曲翻訳者の理想を抱いています。

ぼく自身は30代でようやく演劇を学ぶ機会を得ました。海外演劇人との共同作業を通じて、「演劇づくりは言葉づくりから始まる」ことを全身に刻みつけました。豹の毛皮模様のように。ですが、翻訳劇というものが新訳づくりから始まるとしても、当然、演劇は翻訳者だけでは作れません。TRANSLATION MATTERSの「この指止まれ!」と発する声が届きましたら、お耳を貸してください。若い世代と演劇が今より少しでも親しくなれるようにと考えています。発信する企画に出会っていただけたら最高です。「翻訳は大事!」とうなずいてくださる皆さんとともに、演劇を作り続けたいと願います。

TRANSLATION MATTERS
代表理事 木内宏昌



our works

「戯曲翻訳は台詞を話す人間のためにある」と考え、上演へ向けて新訳された戯曲の書籍化を行います。また、現代翻訳者たちの言葉を次代へと繋ぎます。

新訳戯曲アメリカン・クラシックシリーズ(企画中)
※詳しい情報は後日お知らせします。ご期待ください。


corporate profile

法人名 TRANSLATION MATTERS INC.
一般社団法人トランスレーション・マターズ
おもな事業内容 翻訳戯曲・新作戯曲の企画・自主上演・主催公演・プロデュースなど
海外戯曲・国内翻訳・翻案・研究
翻訳戯曲・新作戯曲の編纂・発行
戯曲翻訳及び上演に関する研究会、講座、講演、シンポジウム、セミナー等の開催
設立年月日 2021年6月15日
代表者 代表理事 木内宏昌
理事 小川絵梨子 小田島創志 小山ゆうな 髙田曜子 常田景子 広田敦郎
連絡先 translationmattersinc@gmail.com

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